消化管の疾患・内視鏡検査

消化管の疾患・
内視鏡検査について

食道、胃、十二指腸、小腸、大腸に分別される消化管には、逆流性食道炎や急性・慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、がん、炎症性性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群など様々な疾患があります。症状も原因により腹痛、嘔吐、下痢、血便、発熱、腹満、食欲不振など様々です。
これらの消化管疾患の診療に内視鏡検査は必須です。胃内視鏡検査(胃カメラ)では咽頭・喉頭(のど元)、食道・十二指腸の観察も可能です。大腸内視鏡検査(大腸カメラ)では小腸の一部の観察も可能です。

内視鏡検査

内視鏡とは、細い管状のカメラを鼻・口、肛門から挿入し、胃や大腸などの消化管を直接観察する検査機器です。日本人に多い胃腸のがんの早期発見が可能であり、逆流性食道炎や胃潰瘍などの症状の原因診断にも非常に有用です。胃がん、大腸がんの罹患率は全国的に高い傾向にあります。症状が無くても内視鏡検査を定期的に行うことをお勧めしています。
近年では、機器の性能があがり正確な診断が可能です。苦痛も少なく、10~30分程度で検査が終了します。

当院の内視鏡検査の特徴

豊富な経験と高度な技術を
持つ内視鏡専門医による検査

当院では細径の内視鏡を常備しており、経鼻での内視鏡検査が可能となっております。日本消化器内視鏡学会専門医師および消化器内視鏡技師免許を持つ看護師による検査を行っております。胃・大腸カメラともに毎日検査が可能です(大腸カメラは火曜を除く)。ご希望があれば午後も検査可能です。胃カメラにおいては絶食であれば受診当日の検査も可能ですが、予約状況によっては後日にさせていただく場合もありますので、可能であれば事前にご連絡ください。ヘリコバクター・ピロリ菌感染症の診断には胃カメラは必須となっています。大腸カメラにおいては検査時に発見したポリープの内視鏡治療も同時に可能です。検査を受けられる方の立場になって、なるべく苦痛の少ない検査となるように心がけております。苦痛の軽減のために、鎮静剤の使用も可能です。ご気軽にご相談ください。

経鼻胃内視鏡検査
(胃カメラ)

昔の胃カメラは、口から管を挿入するタイプで苦痛が伴いましたが、現在は鼻から細い管(先頭部分が5mm程度)を挿入する苦痛の少ないタイプが一般的になっています。鼻から挿入しますので、吐き気が起こりにくく、会話ができるのが特徴です(手術後や鼻炎などの影響で鼻腔からの挿入ができないなどの際は口からの内視鏡挿入も可能です)。口腔内、食道、十二指腸の観察も可能です。当院では最新の内視鏡を常備しており、より正確な診断が可能となっています。

こんな症状はありませんか

  • 胸やけがする
  • 嘔吐する
  • お腹がはる
  • げっぷが多い
  • 食事前後でみぞおちが痛む
  • 黒色便が出る
  • 口の中に酸味、苦みを感じる
  • 食欲が無い
  • 吐血
  • 食事がつっかえる
  • 胃もたれがある

(他、健診で異常を指摘された、ピロリ菌検査がひっかかったなど)

上部消化管内視鏡検査
(胃カメラ)でわかる疾患紹介

逆流性食道炎
胃液などの胃の内容物が食道に逆流して、食道粘膜に炎症を起こしている状態です。胸焼けやゲップ、呑酸、長引く咳などの症状があり、重篤になると出血や食道の狭窄をきたします。アルコール、高脂肪食、食事直後の臥床など生活習慣の影響もあります。
内視鏡検査による診断、適切な治療が必要です。
バレット食道
逆流性食道炎により、食道胃接合部の食道の粘膜が慢性的に炎症が生じ、その部位の粘膜が胃の粘膜に置き換わった状態をいいます。バレット食道は良性の状態ですが、まれにがんが発生することがあるので、定期的に内視鏡検査を行う必要があります。
食道がん
危険因子として喫煙、飲酒、熱い食事の嗜好、バレット食道があげられます。早期の段階ではほとんど症状がありませんが、進行すると食事のつかえ感、嘔吐や体重減少をきたします。予後不良な疾患ですので、内視鏡検査による早期発見が必要です。
急性・慢性胃炎
急性胃炎は、強いストレスや過度の飲酒、特定の薬の副作用などで急に起こりやすい病気です。飲食業で深夜まで勤務される方や長距離ドライバーなど、不規則な生活や眠りが浅い環境にある方でも発症リスクが高まります。急に胃痛や吐き気が出現することが多いですが、早めに検査を受けて原因を確認すれば、短い期間で症状が落ち着く場合が多いです。
一方、慢性胃炎に関しては、まったく症状がなく進むこともあります。しかし無症状でも、炎症が続くと胃の粘膜が萎縮し、潰瘍や胃がんに至る可能性があります。主な原因として挙げられるのは、ヘリコバクター・ピロリ菌です。内視鏡で胃の中を直接観察しながらピロリ菌の検査を行い、必要に応じて除菌治療を検討いたします。
胃粘膜下腫瘍
胃粘膜下腫瘍は粘膜より深い層にできる腫瘍です。多くは良性ですが、中には悪性のものも見つかります。GIST(消化管間質腫瘍)や悪性リンパ腫などが代表例です。無症状で発見が遅れやすいため、他の病気を調べている際に偶然見つかるケースが少なくありません。小さな腫瘍なら定期的な観察を優先しますが、サイズが大きくなったり、潰瘍を伴ったりする場合には追加検査を行い、外科的治療を考える必要があります。
胃・十二指腸潰瘍
ヘリコバクター・ピロリ菌感染や痛み止めや解熱剤の内服、ストレスや食生活の乱れなどが原因となり、胃・十二指腸粘膜が欠損し潰瘍を形成した状態です。みぞおちの痛みや吐血、黒色の便、貧血などの症状を起こします。内視鏡検査による診断、速やかな治療が必要です。
胃ポリープ
胃ポリープには胃底腺ポリープ・過形成性ポリープ・腺腫性ポリープがあげられます。胃底腺、過形成性ポリープは基本的には良性ポリープですので経過観察します。腺腫性ポリープは大きいとがん化している可能性があり、治療の検討が必要です。
胃がん
胃がんの原因の多くはヘリコバクター・ピロリ菌感染による萎縮性胃炎(慢性胃炎)、腸上皮化生を経て発生します。早期の段階では無症状であり、がんの進行により食欲不振、体重減少などの症状がでるため予後は不良です。特にスキルス胃がんは予後が極めて不良です。内視鏡検査による早期診断・治療が必要です。

検査の流れ

  1. Step01

    検査前日

    夕食は、夜9時までに、消化の良いものをとってください。
    水分(お茶やお水などの透明な飲料水)は、検査当日の午前7時まで可です。

  2. Step02

    検査当日

    朝、食事はとらないでお越しください(朝の薬がある場合には指示に従ってください)。

  3. Step03

    検査中

    ベッドに左向きになった状態で検査を行います。
    検査時間はだいたい10分ぐらいです。検査中は内視鏡のモニターを見ながら会話も可能です(経鼻内視鏡検査時)。
    診断のために、必要に応じて粘膜組織の採取(生検)や色素散布を行います。

注意事項

  • 前日の食事は午後9時までにお済ませください。
  • 午後9時を過ぎてからは、水やお茶、スポーツ飲料など色の薄い飲み物だけにしてください。乳製品や果肉入りのジュースは避けていただきますようお願いいたします。
  • アルコールも控えてください。

大腸内視鏡検査
(大腸カメラ)

大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し大腸および小腸の一部を観察することが可能です。腹痛、血便や下痢、軟便、細い便などの便通の異常、体重減少、健診での便潜血検査陽性などの際に検査を行います。診断のため検査中に腸管粘膜組織の一部を採取(生検)する病理組織学的検査や細菌培養検査などを行う場合もあります。
当院では検査中に発見した大腸ポリープや早期大腸癌を切除することが可能です(小さい病変のみ対象)。

こんな症状はありませんか

  • 腹痛がある、続く
  • 体重減少がある
  • お腹が張る
  • 血便がある
  • お腹にしこりがある
  • 便意が何回もある
  • 下痢、軟便がある
  • 残便感がある
  • (健診で便潜血検査陽性だった)
  • 便が細い、少しずつ出る

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)でわかる疾患紹介

大腸がん
大腸がんは日本人の中でもっとも多いがんとされています。
早期の段階では自覚症状がほとんどなく、進行すると血便や便秘などの便通異常、腹痛などの症状が出ます。早期発見の一助として健康診断で行われる便潜血検査が有用です。しかし早期がんや後述の大腸ポリープ(腺腫)に対しての精度が低いため、大腸内視鏡検査がとても有用です。
大腸がんの発生は40歳以上からリスクが高くなるとされています。食生活の欧米化(高蛋白・脂肪食)に伴い増加傾向にあり、遺伝的な要因がある場合もあります。積極的に内視鏡検査を受けることを勧めます。
大腸ポリープ
大腸粘膜に隆起する組織を大腸ポリープといいます。大腸ポリープの多くが腺腫で、大きくなるにつれてがん化のリスクが高くなります。他には過形成性、若年性、炎症性ポリープなどが挙げられます。基本的には無症状ですが、大きくなると出血や便通異常を起こす場合があります。
虚血性大腸炎
虚血性大腸炎は、便秘や動脈硬化などを背景に大腸の粘膜の血流の障害が生じ、粘膜の虚血性壊死を引き起こした状態をいいます。症状として急な強い腹痛、その後の下痢、血便が起こります。多くは一過性の病態で改善しますが、まれに重篤化する場合があります。内視鏡検査では縦走に粘膜障害がみられるなど、病理組織学的検査も含めて診断します。
大腸憩室症
腸管の内圧があがることにより粘膜にくぼみを生じた状態をいいます。加齢や食生活、便通異常により発生、増加をきたすとされ、元に戻ることはありません。大腸憩室症自体は無症候性で良性疾患ですが、合併症として炎症や出血などを起こすことがあります。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、主に大腸に原因不明の慢性的な炎症が起きる疾患であり、下痢、血便、腹痛などの症状を起こします。症状がよくなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴で、適切な治療を行い症状が出ないようにします。内視鏡検査による潰瘍性大腸炎に特徴的な所見の評価と他の疾患の除外が必要になります。クローン病と併せて、炎症性腸疾患と総称されます。
クローン病
クローン病は、口腔から肛門まですべての消化管に潰瘍などの炎症をきたす原因不明の疾患であり、下痢、血便、腹痛、体重減少などの症状を起こします。潰瘍性大腸炎と同様に症状がよくなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴で、適切な治療を行い症状が出ないようにします。内視鏡検査による特徴的な所見の評価と他の疾患の除外が必要になります。

検査の流れ

  1. Step01

    診察、検査の説明

    腹部の診察および検査前日の食事や下剤の内服、当日朝からの下剤内服について説明をさせていただきます。

  2. Step02

    検査前

    前処置として午前中に2リットルほどの下剤を服用していただき、腸内の糞便を出して、大腸内がきれいになったと判断してから検査となります(午前11時~12時頃から検査開始を予定しています。診療状況により開始時間は前後します。)

  3. Step03

    検査

    肛門から内視鏡を挿入して、盲腸までの大腸と小腸の一部を直接観察します。検査は20~30分程度です。(個人差があります。)
    もし病変が見つかれば、必要に応じて粘膜組織を採取(生検)、ポリープ切除、細菌培養検査を行います。

  4. Step04

    検査後

    腹痛の有無など、診察を行います。生検、ポリープ切除を行った際には検査当日は飲酒や激しい運動は控えていただいています。生検などの結果は後日、再診いただきます。

注意事項

  • 検査中は胃の中に空気を入れますので、お腹が張った感じがする場合があります。ただし、検査後数時間で自然におさまります。
  • 終了後はベッドで約1時間お休みいただき、体調が落ち着いているか確認してからご帰宅となります。
  • ご自宅に戻ってから血便や強い腹痛が生じた際は、お手数ですが早めにご連絡ください。

内視鏡検査のみでは
診断がつかない疾患紹介

機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、潰瘍やがんなどの器質的異常や全身疾患がないにも関わらず、みぞおちの痛みや胃もたれなどの腹部症状をきたす疾患です。胃腸の運動の機能障害、知覚過敏、ピロリ菌感染症などが原因と考えられています。内視鏡検査や他の検査などを行い、明らかな異常が無いことを確認することが重要で、症状に応じた適切な治療が必要です。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群とは、内視鏡検査などをした上で腸管に器質的異常がないにも関わらず、腹痛と便通異常(便秘または下痢もしくは両者)を慢性的に繰り返す病気です。 腸管運動機能の異常、腸管の知覚過敏などが原因と考えられています。 発症する主な誘因としては、ストレス、不安、抑うつ、恐怖などの心理的要因や自律神経の失調とされています。
腸閉塞
腸閉塞は、腸内容物の肛門側への輸送が障害された状態のことです。原因として過去の腹部手術による癒着、大腸がんなどによる腸管の狭窄・閉塞、他にはヘルニア(脱腸)などが挙げられます。基本的には医療機関での入院治療が必要な疾患です。

治療について

治療は各疾患により様々です。
食道・胃・大腸がんは早期であれば内視鏡治療が可能です。ポリープも必要に応じて内視鏡治療の適応となります。しかし、進行したがんは手術治療、化学療法(抗がん剤)などの治療が必要となります。逆流性食道炎、胃炎や胃・十二指腸潰瘍、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群などは薬物治療が主体となります。
提携医療機関への紹介を含め、各々の疾患に応じて適切な診断・治療を行います。専門医による高度な知識と経験を生かし、患者様ごとに適切な治療方法の提案を行います。

ご予約・受付

診療時間
8:30~12:00 / 14:30~17:30
※水曜午後、木曜午後、金曜午前は副院長のみの診療です。
休診日
火曜午後、土曜午後、日曜、祝日、年末年始